春の短い期間にだけ現れる昼行性のフユシャクである。
河川敷によく生息地が知られているが、元々は草原性の蛾らしい。
人間の開発により生息場所が河川敷に狭められていった、と見るべきかもしれない。
♂の飛翔は素早く、枯れ草が保護色となり見失うケースが多い。
大人しく撮影対象になってくれることが多い蛾類にしては写真が撮りづらい種だ。
【成虫♂写真】20140303 埼玉県さいたま市<標高10m>
♂はフサフサの触角が目立つ。太陽が出ていて風が弱い時によく飛ぶようだ。
時間的には正午前後によく見る印象がある。
対する♀は全くの無翅でアザラシのタマちゃんのような風貌だ。
【成虫♀写真】20090221 埼玉県さいたま市<標高10m>
産卵中失礼して撮影した。
【成虫交尾写真】20100301 埼玉県さいたま市<標高10m>
2回観察した交尾の時間はいずれも12時半頃。しかし交尾後も♀はまたコーリングして再交尾するという。
あまり聞かない習性である。
【幼虫写真】20130504 飼育
幼虫はノイバラやクローバーなど、多岐にわたる草本を食草とする。
僕はサクラを食べさせていたがよく食いついてくれた。(糞が良い香りになったりする)
フユシャクの中でもフチグロトゲエダシャクは非常に人気が高く、観察に行くと網を持った人と遭遇する確率が高い。
フサフサ触角の♂と愛くるしいアザラシのような♀は"フッチー"の愛称で今年も虫屋に春を告げてくれる。
埼玉では2月後半から3月前半に出現。
産地は非常に少なく、絶滅危惧I類に指定されている。